床に村上春樹の短篇集が落ちていたので開いたページがファミリー・アフェアだったのでつい読んだら、アッアッっとなった。最近は、料理をちゃんと作るモチベーションが妙に高まっていて、夜帰るのが遅くなっても適当に作っているからえらい。ワイングラスを買ったせいもあり、つい一杯に手が伸びる。最近、純文学を読めてなくてしばし反省する。

 「チャンスがなくてね」と僕はフライド・ポテトを口にしながら言った。「幼い妹の面倒も見なくちゃならなかったし、長い戦争もあったし」

「戦争?」と渡辺昇はびっくりしたように訊きかえした。「どの戦争?」

「下らない冗談よ」と妹はドレッシングを振りながら言った。

「下らない冗談だよ」と僕も言った。

ファミリー・アフェア