ちょっと待って、タイトルは保留でいいですか

 少し前、合宿形式のカジュアルな若手の研究者や学生が集まる研究会があって、ドイツから招待講演に来ていた先生と夜通し(本当に明け方までだった)あれこれ話しながら飲む機会があった(おかげで次の朝のセッションは盛大に寝坊した)。みんな酔っ払っていて、何をそんなに話していたのかあまり記憶にないけれど、酔った口にまかせてその先生に「研究がうまく進まないときどうしたらいいですか」と聞いた。そういう夜だった。

 おれは研究が進まないことなんてないよ、結果はいつも出てるんやろ、と言われて一度に酔いが覚めた感覚が忘れられない。期待した結果と違うだけで、それは結果が出てないこととは決定的に違うという意味だと思った。でも確かにそうだ。結果の良し悪しと有無は違う。でも欲張りだから良い方がいいに決まってる。そのほうが何倍もかっこいい。きれいなストーリーで何かの現象を語れるようになりたい。

 先生は続けた。よい結果はなかなかでないし科学は難しい。だからこそ、失敗やトライアンドエラーを毎日続けよ。それともう一つ。失敗も貴重の結果だから、ノートにまとめて、かならず結論を出せ、と言われた。心に留めておこうと思った。今日の結果から言える結論を毎日だす。毎日それを積み重ねる。

 何事も歩き出すまでが難しいのだろう。右足が前に出れば気づくと左足は後を追いかけている。前へと進みだす。

 春の足音を南風に感じた。もう3月なのだ。