切ったのである

 夏の終わりごろから日を重ねるごとにそれは長くなり、下を向いて満足に文字が書けぬことを言い訳に目前の画面ばかりを見ていたり、ついには拉麺を食べる場面にも微かな苛立ちを覚える程までに伸びきってしまったが、幾度あるのかすら定かではない機会を逃し続けこれは野球に換言したところの全打席見逃し三振だと思いつつ、漸くにして本日付けで髪を切ったが想像以上に冷えた霜月の北風が首筋を確実に掠め、冬の到来を執拗に感じさせられる運びとなったが、切ったことへの後悔は全く在らずただただ良好な視界の先を眺めるだけの存在である。