よく晴れた秋の日に
秋学期が始まった。大学に入ってから6学期目に足を踏み入れたことになった。
静けさに包まれた夏期休暇のキャンパスとは打って変わって、おろしたてのワンピースを着たきらきらした子たちが眩しい。バス停を抜けると、中途半端な歩幅の石段にこつこつとヒールの当たる音が響く。乾いた音から軽めのこつこつ。
9月の終わりから10月は、一年で最も貴重で愛おしい季節である。
気温は程よく、空気は澄んでいて空は高い。そんな秋の日曜日には、南北線に乗ってシチリアに行けそうな気がするし、ロマンスカーで贅沢すれば、カリフォルニアへ連れて行ってくれそうな気がする。素晴らしいことだと思いませんか。
今日は晴れだし、お腹も空いたからギリシャにデートしよう、いいよ、それなら丸ノ内線だ、って言える世界はいつくるんでしょうか。そのためには、非常に高度で精密かつ大胆な制御下にある東京都心の路線システムは更に発展する必要があるし、地下鉄はわれわれを行きたい場所へ連れてゆく忠実な(そういうってしまうと近所の柴犬を思い出すが)存在であってほしい。
「南北線シチリア行直通は只今緊急停止ボタンが押されたため、線路内の確認を行なっています」。
ほっこりする。ゆっくりコーヒー飲んで待ちます。
10月はちょっと忙しい。何しろ準備が大の苦手であるから、ぎりぎりになって慌てそうな自分を容易に想像できる。なにかと準備をしたり、発表したり、そのための準備をしなくては。
今年もあと2ヶ月である。うっかりしていると、あけましておめでとうございますです。
それでもなお、南北線のゆく末について考えていたい。たとえ、何者にもなれなかったとしてもである。